大判例

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東京高等裁判所 昭和52年(ネ)245号 判決

以上の事実関係に基づき父である控訴人と母である被控訴人のいずれを親権者と指定するのが、現状において(将来事情が変更すれば、親権者の変更もできる。)子らにとり利益であるかにつき比較考慮するのに、英輝は六歳、香織は五歳で未だ幼い同人らにとって、母親のスキンシップによる養育が父親のそれにも増して重要な時期にあるところ、被控訴人は現在子の監護に専従できる状況にある上、保母の有資格者であるから幼児期における教育の面で父である控訴人よりは勝れているとみられ、その点でも子らにとって利益である。そして英輝は前記のとおり一時被控訴人の許から離れたことがあり、同人に引渡されたのは和解の結果ではあるけれども、二人の子の現在の生活関係が現に三年余も継続し、その間家庭、学校または幼稚園における生活に特に問題はなく、その情緒も安定しているのであるから、ここで英輝、香織を控訴人に引渡して環境に変化を加え、幼い同人らの心身に少なからざる影響を与えることは同人らの利益に合致するものではない。もっとも、被控訴人が、現在自らの収入がなく専ら控訴人の婚姻費用分担及び親族である母方祖父の援助により英輝、香織の生活費を支出している点よりみると、父である控訴人の方が子らにとり利益であるともみられないではないが、このような経済的条件は前記の各事情に劣後するもので、総合的には右子らにとって母である被控訴人に監護される方がより利益をもたらすものといえる。そして、右のような経済的条件は、離婚後も親権者に指定されないとはいえ、子らにとって生涯父親であることに変りのない控訴人が相応の養育料を負担し支払うことで或程度解決できる問題であるばかりでなく、被控訴人には保母等の資格があり、将来就職し収入をえる可能性が大であること前記のとおりである。したがって、右経済的条件が劣ることは親権者を被控訴人母と指定する妨げとなるものではない。

さらに、控訴人は二人のうち英輝についてだけでも親権者に指定して欲しい旨の希望が強いようであるが、この程度の幼児の場合健全に成育するためには、特段の事情の認められない本件では、両者を同一環境で兄妹としての生活体験を積ませるのがよく、それが子らの利益になるといえる。もっとも、男児は中学生のころ以後ことに母親より父親の教育を必要とすることが多いが、その時になればその事情に応じて父である控訴人にその親権者を変更することもでき、それまでの間における父としての役割については、事情変更がないかぎり、前記養育料の支払いのほか、父としての満足や養育料支払の対価としてではなく、専ら子の利益の観点から面接交渉の内容、方法を定め、これを行うことで、子の健全な発育に資するという方法でこれを果すのを相当とし、現在直ちに子の親権者指定を受ける必要はないのである。このような諸点を合せ考えると、現段階においては英輝及び香織の親権者は母である被控訴人と定めるのが相当である。

(中村 高木 清野)

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